私たちの物語

聴覚障がい者の方々と海に潜る機会が、30年ほど前にありました。海中での彼女たちの手話による楽しそうな会話に見とれてしまいました。陸上でも水中でも本当に楽しそうに話し合っている姿が、強烈で鮮明な印象として残っています。

「障害が障害になっていない」

むしろ、陸上でも水中でも自由に話し合えているのです。状況が変わると、障害が障害にはならないことを知りました。
健常で多少お金のある若者だけが海洋スポーツやレジャーを楽しんでいます。障害があるために、海で楽しむことを諦めていたり、障害のためにできないと思い込んでいる人もいます。
もっと多くの人々が、安全に安心して海の素晴らしさや美しさそして豊かさを実感することはできないだろうか、と思っていました。
私たちは、看護師、理学療法士、介護福祉士、ケアマネージャー、医療事務など医療や看護や介助等に、日常従事しています。また、その全員が現役のスクーバダイビングのインストイラクターやリーダーとして、今もダイビング指導や水中ガイドを行っています。
当初は、障がい者の方々にダイビングを普及していきたいという思いから、スタートしました。しかし、障がい者の方々と接するうちに、

「障害は特別なことではない」

ということがわかりました。年を重ねるということは、私たち全員が緩慢に障害を持っていくということと同じであることに、今更のように気付いたのです。 また、体力がなく、体格が小さいために、一人ではできない高齢者や子どもたちも大勢います。
もっと海で遊びたい、もっと海を楽しみたい、と思っている方々を、安全に安心して思いきり海を体感させてあげたい、この素晴らしさと美しさに感動してほしい、という思いが膨らんできました。
もちろん、私たちだけの力では限りがあります。障がい者・高齢者・子どもたちが、海を安全に安心して楽しむために、多くのサポーターやリーダーが必要であることや、その人々を育成や養成するが不可欠であることを痛感しました。
私たちは、2004年に大阪府の認証を受け、NPO法人オーシャンゲートを設立しました。さらに大阪・京都・兵庫などの関西地域に仲間が増えるに伴い、内閣府認証を得る時にNPO法人オーシャンゲート ジャパンと名称を変更しました。
2004年法人設立以来、安全に安心して障がい者・高齢者・子どもたちを含む多くの方々が、海そして自然の中で活動する事業や、ボランティア育成やリーダー養成などの支援者育成事業、そして救命・救助の安全普及事業を実施しています。

毎年、海洋体験プログラムに延べ500名程度の方々がご参加され、マリンボランティア育成やマリンリーダー養成として、延べ300名程度の方々の指導と教育を行っています。
継続的な活動と段階的な技術と知識の習得によって、今まで支援されていた子どもたちが成長して、ボランティアメンバーとなり、障がい者や高齢者の方々も法人の運営や実行に携わっていただいています。
支援する側とされる側という一方通行ではなく、相互に立場や役割を変えながら活動や運営を進めています。循環型のボランティアシステムが構築されているのです。

今後は、関西を中心とした活動を全国に、さらに海外にも広げていきたい、と思っています。安全で安心できる海洋活動を、もっと多くの人々が楽しんでいただけるように実施していこうと思っています。多くの大学や専門学校そして団体・施設や協会との連携もさらに図りながら、海洋技術や知識を広め、安全意識や自然環境保全の意識を高めていきます。福祉と環境の新しい融合した取り組みもどんどん展開していきたいと思っています。
障がい者・高齢者・子どもを含む多くの方々とともに、安全に安心して海を楽しみ、自然保護や環境保全の事を考え、次代へも海の素晴らしさ・美しさ・豊かさをしっかりと伝えていこう、と思っています。
皆様にとって、NPO法人オーシャンゲート ジャパンが、海への安全で安心できる楽しみへの入口になれば、海への開かれた扉になれば、と願っています。